つながり薄れ 増える「無縁遺骨」 終活に詳しい 小谷みどりさんに聞く

今回から、5回シリーズでは「無縁遺骨」についてです。

無縁遺骨についての基本的知識を身につけ、あなたが終活を広める活動にぜひ役立てて頂ければと思います。

不明点などあればいつでもご連絡くださいね。目次

  1. 「無縁遺骨」という言葉を聞いた事があるでしょうか?
  2. ◆高齢化/親戚が引き取り拒否/納骨費用出せず
  3.  −いつから問題になり始めましたか?
  4.   −なぜ無縁遺骨が増えたのか。
  5. ◆「血縁」もはや破綻 福祉の視点で公営墓地を

「無縁遺骨」という言葉を聞いた事があるでしょうか?

無縁遺骨とは、亡くなった後に引き取る人がいないがために、市区町村や納骨堂、遺品整理業者の倉庫などに保管されている遺骨のことです。

高齢化が進み地縁や血縁が薄れる中、この無縁遺骨が急増していると言われています。

総務省による自治体への実態調査の結果、2021年10月時点で、全国の市区町村で管理・保管していた「無縁遺骨」は、約6万柱あったことが確認されました。

無縁遺骨関連のニュースで言われるのは、その対応に各自治体が困っているという内容ですが、自分のお墓に入れないというのは、個人のレベルで見ても望ましいことではありません。

自分のお墓があったとしても、自分の亡き後、納骨をしてくれる人がいなければ、そのお墓に入ることはできません。

ですがそのことを生前に認識しておらず、「誰かがどうにかしてくれるだろう」と対策しないまま、無縁遺骨となっているケースも多いと見られています。

死後の準備の必要性を伝えることは、資格者としてできる大切な役割でもありますので、
伝える際のキーワードの1つとして、無縁遺骨についてぜひ学んでみてください。

「無縁遺骨を減らすために、希望する納骨先や墓の場所を周囲に分かるように書いて残して」と語る小谷みどりさん

「無縁遺骨を減らすために、希望する納骨先や墓の場所を周囲に分かるように書いて残して」と語る小谷みどりさん

 高齢化が進み、引き取り手がいない「無縁遺骨」が増えている。地縁、血縁が希薄になる中、一人で死を迎える人の増加が背景にある。

 ★墓や「終活」に関する著書も多い一般社団法人「シニア生活文化研究所」の小谷みどり代表理事に聞いた。
(宮本隆康)

◆高齢化/親戚が引き取り拒否/納骨費用出せず

 −どんな人が無縁遺骨になるのでしょう。

 社会的に孤立した一人暮らしの人や、身元不明者がなる、という認識を改めなければいけない。

総務省の調査では、無縁遺骨の八割は身元が分かっている。例えば、子どものいない夫婦の妻は、夫や兄弟姉妹よりも後に亡くなると、甥(おい)や姪(めい)が遺骨を引き取らないことが多い。

 夫と息子に先立たれたある高齢女性は、亡くなった後、夫らの墓を姪が知らなかったため、女性の遺骨は自治体の無縁納骨堂に入った。つまり、ある集団で一番後に亡くなれば無縁遺骨になる。かなり多くの人がそうなる可能性がある。

 −いつから問題になり始めましたか?

 十五年ほど前から兆候が出ていた。骨つぼの落とし物は電車やスーパーのトイレでも見つかるようになったし、
火葬場で遺骨を持ち帰りたくない遺族も出ている。表面化しないだけで、ごみ収集に出す人や河川などに勝手に「散骨」する人がいるのが実態ではないか。

 子孫が都会に出るなどしたため、管理されない「無縁墓」という言葉は以前からあった。

でも無縁遺骨の増加が問題になったのは最近のこと。生きている間から家族や親族と疎遠な人は死んだ後も無縁になる。どの自治体も、持ち込まれる無縁遺骨は増えている。墓地埋葬法では、遺骨の引き取り手がない場合、行政が代わりに行わなければならない。 

  −なぜ無縁遺骨が増えたのか。

 一つは、見えや世間体がなくなってきたから。多くの人に、未婚や子どもがいないおじやおばがいる。

以前は、甥や姪が周囲の目も気にして遺骨を引き取っていた。今では地域のつながりも世間体もなくなりつつあり、

十年も二十年も会っていないおじやおばが亡くなっても、引き取らない人が多い。生前に交流があっても、納骨する墓がどこか知らない場合も多い。

 寿命が長くなった影響もある。子どもが高齢者になっても、親も生きているようになった。親子や兄弟姉妹が同居しても高齢者だけの世帯になり、認知症だったり、年金暮らしで納骨費用の捻出が難しかったりするケースもある。

 「揺り籠から墓場まで」という英国の福祉の概念があるが、日本では「死んだ瞬間まで」。
法律上、遺骨は「物」なので、日本では死後は福祉の対象外。だから無縁遺骨は、所有権を放棄されている状態だ。

−このままいけば、どうなるのでしょう。

 無縁遺骨は増えていく。都会だけの話ではなく、田舎も変化のスピードが違うだけ。周囲の人に影響されるため、いったん始まれば田舎の方が変化は速い。

 少子多死化で人口はどんどん減少する。墓の面倒を見る人が減り、無縁墓が増えていく。

◆「血縁」もはや破綻 福祉の視点で公営墓地を

 −どうすれば。 血縁のある縦の関係で弔うという前提が破綻している現象と言える。今後は横のつながりで、

福祉の観点で人の死を考えなければいけない。

 どんな人も子どもやお金の有無に関係なく、生活していた地域で安心して死んでいけるようにするのは、

福祉の仕事だと思う。希望すれば誰でも入れる公営墓地をつくり、遺骨を納める場を提供すべきだ。

 厚生労働省の調査では、一人暮らしの男性高齢者の15%は、二週間で誰とも話をしていない。生きているうちから無縁のようになっている人たちもいる。墓や死者供養が大事というよりも、生きている間に誰からも気にされない人が増えている社会こそが問題。無縁遺骨の増加は、社会の縮図ではないか。

<こたに・みどり> 1969年、大阪府生まれ。奈良女子大大学院修了。シニア生活文化研究所代表理事、武蔵野大、身延山大客員教授。専門は死生学。葬送など生死に関わる諸問題を研究。主な著書に「没イチ」(新潮社)「ひとり終活」(小学館)など。

小谷さんの著書

小谷さんの著書

https://www.tokyo-np.co.jp/article/246551より転用しました。

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