2022/12/7 09:00榊 聡美
寒さが増すにつれ、暖房の効いた部屋から寒い廊下に出た途端、「ぶるっ」と身震いすることはないだろうか。
冬場は急激な寒暖の変化に体が追い付かず、心血管などにダメージを受ける「ヒートショック」への注意が必要だ。
今冬は節電・節ガス対策で、居間以外の暖房を控えようと考える人も増え、ヒートショックの危険性が高まるのではと懸念されている。
心筋梗塞や脳卒中も
「ヒートショックは気温の急激な変化で血圧が上下に大きく変動することによって引き起こされる健康被害のこと。
特に冬場の入浴時には注意が必要です」
そう話すのは、地域住民のかかりつけ医として多くの人を診療してきた阿部医院(東京都目黒区)の清水恵一郎院長だ。
寒い日は、入浴前後の短時間に血圧の変化が何度も起こる。
暖房の効いた暖かい部屋から冷え切った脱衣所、浴室へ移動すると血管が収縮して血液が流れにくくなり、血圧が上昇する。
熱いお湯につかると今度は血管が広がり、血圧が下がる。
こうした急激な血圧の変動によって心臓など体に負担がかかり、ヒートショックのリスクが高まる。
「軽度の場合、症状は倦怠(けんたい)感、目まいなどですが、心筋梗塞、脳卒中といった血管関連の病気を引き起こすことも。
また浴槽で意識を失うと、溺死にもつながりかねません」(清水院長)
医師が防止対策
厚生労働省の人口動態統計によると、令和3年に家庭の浴槽内で溺死した高齢者(65歳以上)は4679人。
これは同年代の交通事故による死者数の約2倍に上る。11~4月の寒い時期に死者数が多いことから、ヒートショックが要因の一つになっているとみられる。
ヒートショック対策を実践する人は少数なのが現状だ。
そんな中、東京ガスは4年前から「STOP!ヒートショック」と銘打ち、給湯器、暖房器具のメーカーなどと啓発活動に取り組む。
今年は東京内科医会とも連携し、高齢者を中心にヒートショック防止のポイントをまとめたリーフレットを配布。注意を呼び掛けている。
同プロジェクトを担当する東京ガスの津田圭子さんによると、ヒートショック防止のかぎとなるのは「住宅内の温度差を小さくする『温度のバリアフリー』」だという。そこで入浴時にできる具体策を聞いた。
加えて、同居の家族に一声掛けてから入浴するようにすれば、配慮も行き届きやすい。
温度のバリアフリーの観点から気になるのが、高温のサウナ。
世代を超えたブームになっているが、清水院長は「特に、心臓に疾患のある人や高血圧の人などは注意を。
長時間の利用や飲酒後に入るのも危険です」と話す。
また、入る前と休憩時に意識してコップ1杯程度の水分を補給し、脱水を防ぐことをすすめる。(榊聡美)
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