「実家は結局、賃貸が難しい理由とは?」

本日のテーマは、「空き家問題」についてです。

空き家問題についての基本的知識を身につけ、あなたが終活を広める活動にぜひ役立てて頂ければと思います。

2018年に総務省が行った統計調査によれば、

全国の空き家数は849万戸、全住宅に占める空き家の割合は13.6%となり、過去最高となっています。

さらに2033年には現在の⇔2倍弱にまで増えると予測されており、⇒「空き家問題」は大きな社会問題となっています。

この問題については、「空き家の売却や活用、処分を望んでいるが、どうしたら良いか分からない」「解体の費用感が分からないため、具体的検討が進まない」といった情報不足が、問題解決が進まない大きな要因となっています。

こういった不動産の扱いも終活における重要な課題ですので、

相談者の悩みに寄り添う意味でも、この問題についての知識を深めておきましょう。

本日も前回に引き続き空き家問題についての基本的知識、そして最新事情をご紹介します。

専門家が教える実家の売却・賃貸経営のリアル

松本明子さんも経験「実家は結局、賃貸が難しい訳」専門家が教える実家の売却・賃貸経営のリアル

  松本 明子 : タレント / 上田 真一 : NPO法人空家・空地管理センター代表理事

  タレントの松本明子さんが「実家・売却・賃貸」の鉄則についてプロに教えて頂きます。

両親の死後、空き家になった実家を25年にわたって維持して1800万円を超える大赤字を出してしまったタレントの松本明子さん。

近年は、自身のしくじりをもとに、実家の行く末を早めに考えることの大切さを伝えています。

この記事では、その松本さんが何に失敗したかを赤裸々につづり、そのうえでこれから実家じまいに臨む読者はどうしたらいいのか、『実家じまい終わらせました!~大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方~』より、空き家問題の専門家であるNPO法人空家・空地管理センターの上田真一氏と松本さんの対談から一部を抜粋し、お届けします。

都市の近郊の立地でも、安心はできない

松本明子(以下、松本):よく田舎の空き家は売ったり貸したりするのが難しいと聞きます。

上田真一(以下、上田):はい。ただ、その状況は何も地方の田舎だけに限った話ではなくて、実は都市の近郊でも起きています。

その象徴は郊外型住宅団地のニュータウンです。

1950年代から1980年代にかけて庶民のマイホームの夢をかなえる場として大量の戸建てや集合住宅の団地が全国で開発されました。

たとえば東京であれば、多摩ニュータウンなどが代表的です。

ただ、ニュータウンは丘陵地帯などに造られたケースが多いので、交通の利便性で劣りますし、坂も多いなど立地があまりよくない。

そういうところに40歳前後の世代がマイホームを購入してどっと移り住んだわけです。

そういえば、松本さんのご実家も高松市の郊外のニュータウンでしたね。

松本:市街からは電車で1時間くらいかかりますかね。

ただ景観はよかったですよ、山の上なので。高松市内を一望できるし、目の前には屋島があって、その先には瀬戸内海が見えたりして。

父が土地を買って平屋の家を宮大工さんに頼んで建てたんです。

1972年、私が6歳のときです。それまでは市内の借家に住んでいました。

上田:実際に現地にお邪魔して拝見しましたが、眼前に広がる光景は絶景でしたね。ご実家の造りも見事でした。

さすがに宮大工さんが建てただけあって、柱、梁(はり)、屋根、基礎と大事な構造部分がしっかりしていて、当時すでに築40年以上経っていましたが、あと50年は住めると思いました。それくらいよく管理もされていました。

松本:父のこだわりの家でした。

上田:ところが松本さんの場合もそうですが、子どもたちは学校を終えると実家を出て独立し、自分で家を持ちますから、ニュータウンのマイホームには高齢になった親だけが住んでいる、というケースが多いんですね。

その場合、親の他界や施設への入所、子どもとの同居などによって住む人はいなくなります。

売るなり貸すなりしない限り、空き家になるわけです。

この状態があちらこちらのお宅で起きている。

松本:そうなると、売ったり貸したりするのは……。

上田:なかなか難しいですね。人が出ていくばかりの町では、小・中学校の規模も小さくなり、スーパーや銀行も撤退して、頼りになるのは郵便局だけというところも珍しくありません。

町は活気をなくし、ますます人が出ていくようになります。

いまニュータウンに行くと、空き家の隣は老夫婦、その隣は独居老人、というケースがとても多い。ニュータウンの空き家率は、ひどいところだと3割を超えています。

かつてのニュータウンは、いまやオールドタウンで、売り物だらけなのです。

松本:空き家率が3割ということは、3戸に1戸は空き家ですか……。

上田:そういう地域では、空き家を売りたい、貸したいと考える人が多いですから、物件が市場で滞留してしまいます。

空き家が多い地域での売却、賃貸は苦労します。

空き家処分は、結局「売却」になることが多い

松本:郊外の場合は少し難しいところがあるにしても、都市圏の場合は人口も多いですし、空き家の処分はしやすいですよね?

上田:そうですね。実家の空き家処分は、大きく売るか貸すかの2つですが、都市圏であれば、売却はどの地域でも選択肢になると思います。

賃貸に関しても比較的広い地域でニーズはあるはずです。

ただし、実際に空き家を賃貸に出す人はほとんどいません。

私どものところに相談に来られる方は、みなさん最初は売却と賃貸を半々くらいで検討されていますが、最終的には98~99%の方が売却を決断されます。

松本:田舎じゃなくて都市部でもそうなんですね。なぜですか。

上田:思い出のある実家を手放したくない、というのが賃貸を検討する方に圧倒的に多い理由です。

確かに不動産会社に仲介をお願いして借り主が決まれば、家賃収入は得られます。

ただし賃貸経営は事業ですから、当然手間もかかればリスクもともないます。

空き家は通常あちこち傷んでいるので、そのままでは貸せません。

事業を始める前には、必要に応じて、外壁の塗装、水回りの設備の交換、屋根を直すなどのリフォームをすることになります。

その費用は数百万円単位になるのが普通です。

松本明子さんが実家じまいまでにかけた累計約1800円の内訳

松本:リフォームはお金がかかるんですよね。

上田:そうなんです。仮に家賃収入が月10万円で年120万円の場合、初期投資に300万円かけるとすればその回収に2年半かかります。

利益が出るのはそれからです。

もとよりそれだけ投資をしても入居者が継続的につく保証はないですし、事業を始めたあとも築年数の古い物件だと給湯器が壊れたり、雨漏りするようになったり、と予想外のトラブルが起きることが少なくありません。

そうなると⇒貸主責任(民法606条)があるので直さないといけない。

初期投資のほかに想定外の出費がかさめば、家賃収入ではなかなかペイできない恐れがあります。

ですから、最初は空き家となった実家を手放したくないけれど、人に貸したいと思っても投資負担の重さや賃貸のリスクがあることにお気づきになって、賃貸ではなく売却、という判断をされる方が圧倒的に多いのです。

松本:私も最初はそう思っていました。だから香川県の空き家バンクにも賃貸と売却の方で登録したんです。

できれば実家を手放したくない気持ちがあったので。

上田:やはり実家ですから、みなさん、できるものなら売りたくはないんです。だから賃貸を考える。ただし、賃貸経営のことはよくご存じないので、つい手間とリスクなしに家賃収入を得たいと、軽く簡単に考えてしまう。

ですから、私どもにご相談に来られる方には、必ず「賃貸経営をする覚悟」についてお話しします。

お金もそうですが、家賃滞納や夜逃げといった入居者とのトラブルもあります。リフォームをするにしても建築会社やリフォーム内容の決定、資金繰りといった事業に関する決定をしないといけません。

こうした事業を行うということに対する手間やリスクをみなさん受け入れられないため、売却に進んでいきます。

マンションも早めに売却する人が多い

松本:親が亡くなったりして分譲マンションの所有者になるケースもあると思うんですけど、マンションでも売る方が多いんですか。

上田:早めに売却される方が多いです。もちろんなかには、好立地で比較的新しいというので、売らずに賃貸に出す方もいます。

分譲マンションの場合は、プロが管理をしてくれるので、戸建てほど人に貸すリスクが高くないんです。

ただし貸せるほどモノや立地がいい物件は少ないので、賃貸経営を選ぶ方は多くはありません。

かといって、いま住んでいる自分の家もあるので親のマンションを使うこともない。

松本:でも、ただマンションを持っているだけでも、固定資産税のほかに管理費と修繕積立金が毎月かかってきますよね。

上田:そうなんです。だから、早めに売却される方が多いのです。

松本:ただ持っているだけという人は少ないわけですね。

上田:そうですね。維持費が負担になるので結局売られる方が多いですね。

実家を賃貸物件にして成功する3つの条件

松本:実は香川県の空き家バンクに登録してしばらくした頃、借りたいという人が現れたんです。でも「月2万円なら」というのでお断りしました。

登録時の希望は月10万円。最低でも月5、6万円と考えていたので。いまから思えば、高望みでした。

どうしても賃貸を成功させたい場合は、どんなことが条件になりますか。

上田:地方の不動産需要がかなり小さい地域の場合は、賃貸物件がほとんどありませんから、逆に手入れがされた状態のいい物件であれば、空き家の活用法として賃貸も選択肢になる可能性はあります。

ただし田舎で家賃が月2万円しか払ってもらえないとしたら年24万円ですよね。初期投資に200万円かけたら、回収に8年以上かかります。

さらに雨漏りなどで修繕費が300万円かかれば、その回収に12年以上かかってしまいます。

家賃が低い地方の場合は、家賃で初期投資や修繕費をまかなうのが難しい場合が多いのです。

松本:賃貸が成立するラインというか、具体的な目安があれば教えてください。

上田:当センターの場合、ポイント①⇒人口が10万人以上、、ポイント②⇒家賃を10万円以上払ってもらえるポイント③⇒リフォーム代(初期投資)を10年以内で回収できる、というのが1つの目安です。

実際は家賃5万円程度が目安になるかと思います。

それを下回ってしまうと修繕等の負担が重すぎるケースが増加します。

たとえば首都圏の埼玉県を例にするなら、所沢は人口30万人の都市ですから問題ありません。その先の入間や狭山も人口15万人前後なので大丈夫です。

でもそれより奥に入ると人口が10万人を切ってくるので家賃10万円は難しく、初期投資や修繕コストを考えると経営的に合わなくなってきます。

松本:高松は人口40万人ですけど、私の実家のように郊外で家賃が「2万円なら」と言われるような場所では厳しいということですね。

上田:そういうことです。

松本:私の場合はそこまで深く考えたわけではありませんでしたけど、希望するような値段で借りてくれる人はいそうもないな、と見切りをつけて売ることにしました。

上田:よい判断だったと思います。

東洋経済 オンライン 7月28日(木)より引用しました。

  

次回も、引き続き大きな社会問題となっている「空き家問題」

についてお知らせします。

終活に関する記事はこちらをご覧ください。

詳しくはこちら⇒<<沖縄終活案内所>>

これからもあなたの終活について一緒に考えていきたいと思います。!

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