「亡くなったとき、お葬式やお墓はどうしよう」。そんな心配をしている“おひとりさま”は少なくないだろう。
実際、永代供養の墓の生前予約が注目を集めているとも聞く。
しかし、相続・終活コンサルタントで相続専門行政書士の明石久美さんは、こう指摘する。
「多くの人が亡くなったあとのことばかり心配されますが、生前のことも考えるべきです。体が思うようにいかなくなったとき、判断力がなくなったとき、一人だとどうなるのか? まずそのリスクを考えてほしいと思います」
子どもがいなくて、近くに頼れる人もいないおひとりさまは、老いゆく自分にどう備えたらいいのだろうか?
おひとりさまの老後に想定されるリスクと、それに備える“3つの契約”について明石さんが解説する。
自分の変化に気付いてもらう「見守り契約」
「亡くなったとき、お葬式やお墓はどうしよう」。そんな心配をしている“おひとりさま”は少なくないだろう。
実際、永代供養の墓の生前予約が注目を集めているとも聞く。
しかし、相続・終活コンサルタントで相続専門行政書士の明石久美さんは、こう指摘する。
「多くの人が亡くなったあとのことばかり心配されますが、生前のことも考えるべきです。
体が思うようにいかなくなったとき、判断力がなくなったとき、一人だとどうなるのか?
まずそのリスクを考えてほしいと思います」
子どもがいなくて、近くに頼れる人もいないおひとりさまは、老いゆく自分にどう備えたらいいのだろうか?
おひとりさまの老後に想定されるリスクと、それに備える“3つの契約”について明石さんが解説する。
財産管理や手続きなどをおこなってもらう「任意代理契約」
たとえば、銀行に行ってお金を下ろす、福祉や介護の手続きのため役所の窓口に行くといったことも、体が不自由になると一人では難しくなる。
病院や施設に入っていて外出がままならなければ、自分の財産ですら自由にできなくなる。
「本人に判断能力はあるけれど、体が不自由になったとき、委任状を作成して誰かに頼むこともできますが、
毎度では、頼むほうも頼まれるほうもストレスとなります。
そのような時に、財産管理や諸手続きを行ってもらう契約が、『任意代理契約』です。
最近では、入院するにあたって、病院から『財産管理を誰かと契約してきてください』と言われて相談に来る人もいます」
判断力が低下したら代理人になってもらう「任意後見契約」
認知症になり判断ができなくなったら、さまざまな問題が生じる。大きいのが財産の管理だろう。
要支援だった利用者の認知症が進み、お金の管理がままならなくなり、ケアマネージャーが利用者の
財産管理で困っている、といったケースも珍しくないという。
ほかにも、認知症になれば施設に入ろうにも自分では探せないし、契約もできない。
たとえば、「マンションを売却したお金で老人ホームに入ろう」といったライフプランを想定していたとしても、
判断力がなくなると不動産取引はできない。判断力がなくなると、あらゆる契約が結べなくなるのだ。
「『任意後見契約』は元気なときに後見人になってもらいたい人と契約を結んでおき、判断能力が低下したときに、その相手に財産管理だけでなく、生活や医療、介護に関する契約や手続きをおこなってもらう契約です。
この契約がないまま、頼れる身内のいないおひとりさまが認知症になると、
行政が介入して家庭裁判所で、後見人をつけてもらうことになります」
これを聞いて、「なんだ、行政がやってくれるんだ」と思うかもしれない。
しかし、それはあまりにも楽観的にすぎるという。2025年以降、団塊の世代が後期高齢者になり
認知症が増加することは間違いなく、行政の手が回らなくなることが想定されるというのだ。
「行政が必ずやってくれるとは限りませんし、後見人への報酬も必要です。
また、後見人がついたとしても、その人はあなたがどういう人生を歩んできたのかまるで知らない人です。
施設選びにしてもお金の使い方にしても、あなたの望むかたちにはならないかもしれない。
★少なくとも、事前に自分の意思で任意後見契約を結び、任意後見人になってくれる相手と話し合いをしておけば、
亡くなるそのときまで、望んだかたちの支援を受けることも可能です」
目安は70代、具体的な備えの検討を
「見守り契約」「任意代理契約」「任意後見契約」、いずれも基本的には本人が選んだ成人であれば、姪や甥などの親族や弁護士や司法書士、行政書士などの専門家、NPO法人や社会福祉法人などに依頼することもできる。
ポイントとなるのは、これらの契約は契約書を締結してすぐにはじまるわけではないということ。
「見守り契約」と「任意代理契約」は、見守りや財産管理などを行ってもらいたい意思を契約相手に伝えたときから契約がスタートする。事前に契約だけを結んでおくことで、備えることができるのだ。
そのため、契約しても、契約を使わずに亡くなる人もいるそう。いわば、「保険に近いイメージ」(明石さん)。
「言い換えれば、契約さえしていればすぐにサポートに入れるけれど、契約がなければ、第三者は手出しができないということです。
これらの契約も公正証書で作りますので、判断能力が微妙になると契約を結ぶことが難しくなります。
健康状態には個人差がありますが、80歳になる前、70歳を超えたら具体的な検討をはじめてほしいと思います」
3つの契約が与えてくれるのは、「頼れる人がいる」という安心感。それは、おひとりさまにとってとても大きな存在となることは間違いないだろう。
プロフィール】
明石久美(あかし・ひさみ)/明石シニアコンサルティング代表。明石行政書士事務所代表、相続・終活コンサルタント、特定行政書士、ファイナンシャルプランナー(CFP/1級)。長く相続業務に携わり、終活の知識も豊富で、相談業務のほか、雑誌・週刊誌、新聞などメディア出演、講演会など幅広く活躍。著書に『障がいのある子が「親亡き後」に困らないために今できること』(PHP研究所)、『読んで使えるあなたのエンディングノート』(水王舎)など。
取材・文/鈴木靖子
https://www.moneypost.jp/1045107
より引用しました。