人生100年時代を生きるキーワード:高齢者向け施設・住宅
高齢者向けの住宅や施設のひとつに、シニア向け分譲マンションがありますが、
それを選択するメリットや他の施設との違いがあまりわからない、という人は多くいます。
この記事では、そもそもシニア向け分譲マンションとはどういった特徴があるのか、わかりやすく解説しています。
探し方や住むまでの大まかな流れも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
<目次>
- 1. シニア向け分譲マンションとは?
- 2. シニア向け分譲マンションのメリット
- 3. シニア向け分譲マンションのデメリット
- 4. シニア向け分譲マンションの選び方
- 5. シニア向け分譲マンションを探すのにおすすめのサイト
- 6. シニア向け分譲マンションに住むまでの大まかな流れ
- 7. シニア向け分譲マンションのへの住み替えは時間をかけて検討を
1.シニア向け分譲マンションとは?
シニア向け分譲マンションとは、バリアフリー化が施され、高齢者が暮らしやすいように配慮された設備や娯楽施設、食事の提供、フロント対応による各種サービスなどが充実している分譲マンションのことです。
この章では、特徴や内容、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)との違いについて解説します。
(1)シニア向け分譲マンションの特徴
まず、シニア向け分譲マンションの入居条件、設備、サービス内容、購入するための初期費用や月額利用料など、主な特徴について詳しく説明します。
入居条件 | 基本的には自立した生活が送れる高齢者 |
設備やサービス | ・娯楽設備(温泉、プール、カラオケルーム、レストラン、図書室など)を そろえているところが多い ・居室内はバリアフリー化設計、35〜100㎡が一般的 |
物件価格 や管理費 | ・物件価格は数千万〜数億円と幅広い ・月にかかる費用の相場は約10万〜30万円程度 |
それぞれ詳しくご説明します。
①入居条件
シニア向け分譲マンションは、基本的には自立した生活が送れる高齢者が入居の対象となる施設です。
要支援1〜2、要介護1〜5の人も住むことは可能ですが、施設は介護サービスを提供しないため、
必要であれば外部業者に委託をする必要があります。
入居の基準はマンションによって異なりますが、「60歳以上」など入居年齢の下限を設けている場合もあります。
②設備やサービス
施設内の設備は各マンションによりますが、温泉、プール、カラオケルーム、レストラン、図書室などの娯楽的な設備をそろえている場合が多いです。
一般的な居室内は、バリアフリー化設計、35〜100㎡と広々とした面積となっており、キッチン・トイレ・浴室なども完備されているので快適に暮らすことができます。
また、居室、トイレ、浴室などには24時間管理室への通報可能な緊急通報装置を
設置している建物も多いので、万が一のときにも安心です。
※食事の提供や、フロントにて各種サービスへの対応をすることは可能ですが、
介護サービスが必要な場合には外部業者に委託をする必要があります。
③物件価格や管理費
物件価格は立地やグレードによって異なり数千万〜数億円と幅広く、住宅ローンを利用することも可能です。
購入をすると「所有権」を得て資産になるので、売却による他人への譲渡、相続をすることもできます。
管理運営は入居者による管理組合が主となるので、通常のマンションと同様の位置づけとなります。
毎月かかる費用面でみると、一般的な分譲マンションと同様に管理費、修繕積立金などがかかり、加えて年4回、固定資産税などの税金も支払う必要があります。
※また、フロントサービス、見守りサービスなどのサービス利用料、食事の提供、施設利用料など各施設によって異なりますが、月にかかる費用の相場は約10万〜30万円程度となっています。
介護サービスを受ける場合には、さらに外部事業者との介護サービス利用費がかかってきます。
(2)シニア向け分譲マンションとサ高住との違い
シニア向け分譲マンションを検討するときには、サービス付き高齢者向け住宅
(サ高住)との違いもおさえておくとよいでしょう。
これらは自立した生活が可能な高齢者を対象とした施設である、
介護サービスが付属していない、など共通点は多いですが、権利形態や費用の面で大きく異なります。
シニア向け分譲マンション | サ高住 |
・分譲マンションと同じく購入者に「所有権」がある ・初期費用が高額で転居もしにくい ・自分の資産として所有できるので売却や相続、賃貸などが可能 ・娯楽施設やレクリエーション活動が豊富で 、アクティブな生活を送ることができる | ・権利形態は「終身賃貸借契約による 賃借権」 ・初期費用が安いため転居がしやすい ・安価で最低限のサービス (バリアフリー対応・安否確認・ 生活相談・生活支援サービスなど) が受けられる |
2.シニア向け分譲マンションのメリット
シニア向け分譲マンションには、それぞれメリット・デメリットがあります。まず主なメリットを三つご紹介します。
(1)自分の資産になる
(2)生活の自由度が高い
(3)サービスや娯楽設備が充実している
(1)自分の資産になる
一般的な分譲マンションと同様に、シニア向け分譲マンションは購入すると資産を所有することになります。
そのため、自由な室内リフォーム、売却、子への相続、賃貸物件として貸し出すことなどが可能です。
(2)生活の自由度が高い
専有部分内にキッチン、浴室、トイレなどが独立して備わっている所が多く、自炊も可能です。
また、有料老人ホームでは1日のスケジュールや家族との面会時間などが細かく決められていますが、
シニア向け分譲マンションでは制限はなく、外出や外泊など自由にすることが可能です。
(3)サービスや娯楽設備が充実している
マンションの多くはレストラン、カラオケ、プール、フィットネスジム、マージャン卓、図書室などの娯楽設備が充実しています。
また、サークル活動や季節ごとのイベントなど、入居者同士が楽しく交流しながら暮らすことができます。
サービスや娯楽設備は建物によっても異なりますので、事前によく調べておきましょう。
3.シニア向け分譲マンションのデメリット
シニア向け分譲マンションの主なデメリットは、以下の三つです。
※メリットと共に覚えておき、他の高齢者施設と比較をしてみましょう。
(1)購入費用・月額費用が高い
(2)要介護度や認知症の状態が重症化すると住み続けるのが難しい
(3)まだ物件数が少ない
(1)購入費用・月額費用が高い
シニア向け分譲マンションは、入居時に高額なマンションの購入費用が必要になります。
また、管理費や修繕積立金のほかに食事、フロントサービス、見守りサービス利用料、外部事業者との介護サービス費用なども毎月かかって来るので、月々かかる費用も高くなりがちです。
※さらにマンションは「資産」のため、固定資産税も毎年支払っていく必要があります。
(2)要介護度や認知症の状態が重症化すると住み続けるのが難しい
介護サービスを利用したい場合には外部事業者による訪問介護サービスを利用します。
ただ、重度の要介護レベルの状態になった場合、認知症の症状が重症化してきた場合には、外部事業者のサービスだけで生活するのは困難なことがほとんどです。
そうなった際には、介護付き有料老人ホームなどへ移ることを検討しなければいけません。
(3)まだ物件数が少ない
シニア向け分譲マンションは物件数がまだ少なく、購入する際の選択の幅が狭いのが実情です。
売却をしたり賃貸物件として貸し出したりするときにも、事例が少ないため相場価格がわかりにくい、入居条件などが設けられている特殊な物件のため時間がかかりやすい、などのデメリットがあります。
4.シニア向け分譲マンションの選び方
ここでは、シニア向け分譲マンションを選ぶときのポイントについてまとめてみました。
ネット上の情報だけでなく、実際に見て、歩いて、話を聞いたうえでじっくりと検討してから選ぶようにしましょう。
・スーパーや医療機関が徒歩圏内にあるか
・駅やバス停などが徒歩圏内にあるか
・建物周辺は平坦で歩きやすい道路か
・マンション内のコミュニティーは良好か
・自分の家族がすぐ来られる距離の場所にあるか
・どのような室内設備があるか
・娯楽施設の種類や内容はどうか
・提供されるサービスの体制や食事などの内容が自分に合っているか
・介護サービスの可能性なども含めて毎月支払っていけそうか
・要介護度や認知症が進んだ場合の住み替え資金に余裕があるか
5.シニア向け分譲マンションを探すのにおすすめのサイト
この章では、シニア向け分譲マンションを探すためにおすすめな検索サイトを三つご紹介します。
(1)LIFUL介護
「エリア」「路線・駅」「車での移動時間」「地図」、という四つの条件からそれぞれ自分に合ったマンションを検索することが可能です。
施設内写真も多く、施設ごとに生活情報や施設スタッフブログなども掲載されているので、初心者にもわかりやすくなっています。
(2)オアシス介護
「エリア」や「施設の種類」からだけでなく、「人気の条件」「各種こだわりのキーワード」からも検索することが可能です。
※施設内写真も多く、施設内で開催されるイベントスケジュールなども月ごとに掲載されています。
(3)シニアのあんしん相談室
サイト運営実績が18年と長く、相談員のサポートを受けながら全国の厳選された施設のなかから探すことができます。
検索ページは、「エリア」「路線」からだけでなく、「施設ごとの特徴」によって検索をすることも可能です。
「用語集」や「入居までの手続き」など、細やかな内容のコラム記事も多いため、とても参考になります。
6.シニア向け分譲マンションに住むまでの大まかな流れ
この章では、インターネットでシニア向け分譲マンションを探したところから入居するまでの大まかな流れを五つのステップに分けましたので、各ステップで行うべきことを把握しておきましょう。
(1)情報を探す・資料請求をする
インターネットなどで調べ、気になった物件が出てきたら、資料請求をして資料を取り寄せます。
(2)問い合わせ・見学をする
候補がいくつか見つかったら、まずは各施設へ問い合わせをして物件の見学をします。
見学はサービス体制、スタッフの人員体制、食事、入居者の雰囲気など、資料では得ることができない情報が手に入ります。
※必ず1件だけでなく数件見て比較をするようにしましょう。
(3)購入申し込み・面談
物件が決まったら入居申込書に記入をし、当該物件の販売・仲介・運営管理などを行う会社(以下、運営会社)に提出します。
物件によっては数万円程度の申し込み証拠金を求められる場合もあります。
その後、運営会社による入居審査(要介護度や介護の必要性、資産や収入の確認など)がおこなわれます。
※住宅ローンを利用する場合には、住宅ローンの申し込み、審査へと進みます。
(4)契約
入居可能と判断された場合、運営会社による重要事項説明が行われたあと、運営会社に手付金を支払い売買契約を締結します。
住宅ローンを利用する場合には、住宅ローン契約も締結します。
後日、残金の支払いと本人確認書類、印鑑、収入証明、健康診断書などの書類をそろえて運営会社に提出し、契約終了となります。
(5)入居
いよいよ入居です。入居日までにやっておくべき手続きや、用意しておくべき物などを施設にも確認しながら、計画的に準備しましょう。
7.シニア向け分譲マンションのへの住み替えは時間をかけて検討を
シニア向け分譲マンションは、メリットだけでなく、デメリットも考えて選ぶ必要があります。
費用も高額ですので即決をせず、家族とじっくりと話し合いながら検討をしていきましょう。
(AFP・宅地建物取引士 小泉寿洋)
- 小泉 寿洋(こいずみ・としひろ)AFP・宅地建物取引士一部上場グループに所属する賃貸不動産会社で賃貸仲介店舗、賃貸管理部門に所属し、社員から部門の管理職まで14年半ほど従事。その後、不動産仲介・リノベーション工事・生前整理・終活サポートの会社を仲間と立ち上げ、現在はフリーランスにて賃貸経営・賃貸管理・終活に関してのアドバイスやコンサルティング・終活セミナー講師・不動産系ライターなど各方面で活動中。所有資格は終活カウンセラー1級・終活ガイド1級・2級ファイナンシャルプランニング技能士・遺品整理士・相続診断士ほか。