2021/5/26 2021/6/1 お墓屋さんの豆知識
2021年4月現在、コロナ禍は収まる気配を見せません。その影響でお葬式も規模縮小の流れが止まらず、葬儀業界の業績は悪化の一途をたどっています。
さらにここへ来て、コロナは仏教界にも深刻な影響を及ぼしていると、新聞などのマスコミで取り上げられるようになりました。しかもそれは、社会全体にも影を落としつつあるといいます。
仏教界へのコロナの悪影響とはどういうものでしょうか。そして社会全体への波及とはどんなことなのか、今回はそのあたりを調べてみました。
目次
仏教界の年間収入が半分以下に
コロナによる葬儀規模縮小と死者数減が原因
葬式仏教体質も背景に
お寺の破産拡大の危機
お墓はどうなる?
僧侶失業と地域衰退の心配も
まとめ
目次
仏教界の年間収入が半分以下に
文部科学省の調査によると、日本全国にお寺が7万7000ほどあります。ただこのうち約1万7000が空き寺だそうで、ということは実際に住職さんがいるお寺は約6万軒ということになります。
一方、お寺の年間収入は全体で約5700億円。それを単純に6万で割ると950万円で、これがお寺1軒あたりの年収となります。
ただし、これはコロナ前の話。2020年には全体で約2700億円となりました。コロナ禍によって仏教界の年間収入は半分以下にまで落ちこんでしまったのです。
コロナによる葬儀規模縮小と死者数減が原因
お寺の収入がここまで減ったのは、コロナ禍によるお葬式や法事の減少や規模縮小によるものです。
このコーナーでは以前にも触れていますが、お葬式は家族葬になったり、火葬だけを行う直葬も増えています。それによってお坊さんが登場するステージが減ったわけで、当然仕事が少なくなりました。
また、コロナで亡くなる人がいる一方で、感染対策の強化によってインフルエンザでの死者が、さらに巣ごもりのため交通事故で亡くなる人が減っていて、それらの減少数の合計はコロナの死者を上回ります。
つまり、お葬式の規模縮小に亡くなる人そのものの減少が加わり、こんなことをいっては語弊がありますが、仏教界はダブルパンチを食らったといってもいいわけです。
葬式仏教体質も背景に
なぜこんなことになったかというと、日本の仏教はいわゆる葬式仏教だからともいえます。葬式仏教とはお葬式の時にしか必要とされないという意味です。
したがって、人が死ななければ仏教界は立ちゆきません。葬儀業界ならそれもうなずけますが、宗教界の体質がこれでは違和感があります。
それでもこれが実態であり、この体質がコロナ禍における収入低下につながっているのです。
お寺の破産拡大の危機
お金の話に戻ります。
お寺1軒の年間収入はコロナ前で950万円と書きました。しかし、これは単純平均であり、実は全体の約4割が300万円未満でした。300万円以上500万円未満が約15%。つまり、半数以上のお寺の年収が500万円未満であり、これはギリギリの経営状態といえます。しかもそれが、コロナ禍で半分以下にまで落ちてしまったのです。
2020年には、コロナで収益が悪化した企業や法人、個人事業主などに上限200万円を支給する持続化給付金制度が実施されました。しかし、宗教法人はその対象ではありませんでした。政教分離を鉄則としているため、宗教団体に税金をつぎ込むわけにはいかなかったのです。
これでは経営は立ちゆきません。コロナの影響が続けば、お寺の破産が激増すると考えられます。
お墓はどうなる?
お寺の破産が広がったらどうなるのでしょうか。まず心配されるのはお墓です。
廃寺になって墓地を管理する人がいなくなったらと考えると、恐怖すら覚えます。沖縄では菩提寺を持つ人が少ないのでまだまし、といったら不謹慎だと怒られるかも知れませんが。
そこまでいかなくても、墓地の所有権が他者へ移った場合「お墓を改葬しろ」といわれるかも知れません。お墓を別の場所へ移せ、というわけです。
これはこれで大変です。新所有者が改葬のための費用を出してくれたとしても、新しい墓地を探すのも簡単ではありませんし、探せたとしてもそれ以前のように管理してもらえるかという心配もあります。場合によっては改葬が無縁墓化の引き金になりかねません。
僧侶失業と地域衰退の心配も
もうひとつの心配は、お坊さんが失業したらどうなるかという点です。
普通に考えると僧侶の転職は相当大変そうです。法衣に身に包んでお経を唱えていた人が、スーツにネクタイのサラリーマンに変身するのはかなり難しいのではないでしょうか。
さらに、お寺には昔から地域の核という役割もありました。
その核がなくなったらと考えると、少子高齢化も加わって地域衰退の道をまっしぐらに転がっていくのではないかと心配になるのです。
まとめ
コロナ禍において、お寺の収入が激減しています。
もともと持っている葬式仏教体質のせいもあり、コロナがそうした体質をさらに明らかにしたともいえます。
お寺の破産が増えたら、お墓も大きな影響を受けそうです。それだけでなく、僧侶の失業や地域の衰退など、社会全体で見ても困ったことになる可能性があります。