看取りって必要?

余命を宣告されても、それよりも短くもなれば長くもなる、誰も予想ができない人生の終止符において、人間の一生を終える形は様々あります。

近年注目され始めた「看取り」という旅立ち方。


選択肢の一つではあるが、なぜ看取りが必要なのか、その背景には何が要因になっているか、社会の変化とともに看取りについて知り、自分らしい旅立ちに向けて備えてみませんか?

なぜ看取りが必要?

無理な延命治療などは行わず、自然に亡くなられるまで幸せな思いで旅立つことができるよう、「看取り」が必要とされています。

少子高齢化などの時代の変化により、孤独死が増加する問題に備え、近年「看取り」が注目を集め始めました

看取りに関する政策や看取りの場の確保などが行われているなど、社会からの「看取り」の必要性はかなり高まってきました。

日本看取り士会の柴田さんは、「住み慣れた自宅で家族に看取られる文化を私は取り戻したいと思っています。死は決して暗くて怖いものではなくて、逝く人にとっては愛されていると感じて旅立てる温かくて幸せな瞬間であり、家族にとっては肉親のいのちのエネルギーを受けとる前向きな経験だからです」と設立理由を語っておられます。

”旅立てる温かくて幸せな瞬間”

そんな瞬間を、本人とご家族の意思を尊重しながら構築できる看取りは、尊厳死をかなり象徴できるものではないでしょうか。

人生の看取りを専門職とする「看取り士」も、かなり重要な存在です。

なぜ看取り士が必要な社会? 

結論から述べると、少子高齢化が要因としてあげられます。

高齢化に伴い、少子化も進行するということは、ご家族の協力が乏しくなったり、入居する施設等が足りなくなったりし、看取りができない状況に陥ります。

それは、孤独死が増加することを意味しており、日本が抱える深刻な問題でもあるため、早めの対策が必要不可欠です。

そこで、1人で旅たたせないためにも、看取りのプロである「看取り士」の力が必要なのです。

看取り士が求められるようになった背景は何?

日本は、2025年までに、4人に1人が75歳以上の超高齢者化社会を迎えるといわれています。


そこで懸念されるのが、「看取り難民」が増加することです。

厚生労働省によると、2030年には自宅はいうまでもなく、病院や施設でさえも死を迎えられない看取り難民が47万人に達すると、試算されています。

従来は、2世帯3世帯家族が多く、祖父母を自宅で看取るのが当たり前でした。


しかし、時代とともに、核家族が増加、加えて少子化が深刻な問題になり、施設や病院等の空きが減少し入居できない老人も増えています。

高齢化がますます深刻化し死亡者が急増するにも関わらず、自宅で看取ることもできなければ、施設や病院等の受け入れ体制もパンク状態。

このように、誰にも看取られず旅立つ孤独死が増加する社会が迫り、国が政策を出すほど深刻な問題になってきています。

これが、日本が抱える「看取り難民」問題の現実です。

看取り士が求められているのは、「看取り難民」問題を解決すべく期待されており、今後の社会で必要な存在であるためです。

時代に伴う看取りの変化

少子高齢化が深刻化し、次の世代は「多死社会」に時代が移行するといわれています。

「多死社会」とは、高齢化の後に死亡数が増加し人口減少が加速する状況のことです。

多死社会によって懸念される問題として看取りの場所、火葬場不足、家族や介護者へのケア(グリーフケア)、財産の継承、単身の高齢者が多いため亡くなった方の身寄り探しなどがあげられます。

新たな社会問題として注目されるようになり、国をあげての対応も慌ただしくなってきました。

20世紀に発展してきた病院中心の「治す医療」から、地域全体で「治し支える医療」へ発想の変化に伴い、看取りケアの強化や、各自治体において地域包括ケアが盛んに行われています。

自宅での看取り希望が多いのではないのか?

住み慣れた、親しみの場所である家で看取りをする要望が多い事は事実です。

しかし、近年「実現困難」と考える方が増加しています。

自宅での看取りが困難な理由としては、急変時に本人や家族が不安を抱えてしまうことや、介護者への負担、在宅医の不在により迅速に対応ができない事があげられています。

本人の要望を尊重し痛みのないよう安心して欲しい、と考えていても目の前の本人の急な変化に対応するのは難しいのが現実です。

食欲低下や意識低下などに対して、家族が対応することは難しく不安が募るなどを考えると、自宅での看取りは、かなり勇気がいる選択かもしれません。

一方、高齢者施設においては、看護師や介護士が常駐しているケースがあるため、対応することが可能な施設に入居する人が増えてきました。

施設スタッフとの信頼関係も構築されるため、介護の面だけに限らず、最後の迎え方について気楽に相談できる点は、施設入居者のメリットの一つです。

実際には、施設で最後を迎えたい方も多く存在します。

本人や家族の身体的・精神的負担が軽減し、病院以外で安心して行える看取りの場所ということで、施設での看取りを選択する人が増えてきているのです。

看取りケアとは?

看取りケアは、別名看取り介護と呼ばれることもあります。

最後を迎えようとする方が自分らしく穏やかに旅立てるよう、苦痛やストレスをできるかぎり少なくして生活の質を高めるための介護のことです。

主に、

食事や排泄、入浴といった日常的な身体面のケア不安

恐怖といった精神的な苦痛を緩和する精神面のケア

要介護者本人とその家族の不安や苦痛を取り除く家族へのサポート:グリーフケア

を行なっています。看取りケアが重要視された理由としては、超高齢化社会ではますます核家族化が進むほか、少子社会においては、介護する家族のいない一人暮らしの高齢者が増えると予想されているからです。

病院に代わり、介護施設での看取りが一般化すると見越し、看取りケアに重きが置かれるようになりました

地域包括ケアとは?

厚生労働省によると、「医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される」と定義されています。

退院後、訪問診療・看護、リハビリなどを、自宅で医師、看護師などから受けることが可能です。
また、デイサービスなどの介護保険のサービスを利用できるようになり、中学校区を基本とした圏域ごとに整備され、おおむね30分以内にいくつかのサービスを受けることもできます。

看取りについて知る事はかなり有利!!

少子高齢化から多死社会に向けて時代が変化しようとしている中で、看取りをしてもらえることが当たり前でないことを、感じている人も少なくないでしょう。

病院で一生を終える以外にも選択肢がある今の時代だからこそ、看取りを必要とする人が多くなり、必要性も高まっています。

看取りのニーズが増えている以上、社会の形態に合わせた対策も必須です。


看取りについて知る事は、ご家族の方や自分が孤独死にならないことにもつながります。

看取りを知る事は、死に対してめまぐるしく変化する社会にも負けず、自分らしさを追求した死を選択できる可能性を秘めているのです。

 

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