あなたは「看取り士」という職業があるのはご存知でしょうか?
生前整理や、遺品整理が注目されている中で、「看取り士」の存在も重要になってきています。
そんな「看取り士」ですが、認知はまだまだ浅く、知らない人の方が大半を占めています。
今回は、看取りという基本の部分から、看取り士の仕事内容まで徹底解説していきます。
一度きりの人生、旅立つ前や後も、良い人生だった思わせてくれる「看取り士」の魅力について迫っていきます。
看取りとは
看取りとは、無理な延命治療などは行わず、高齢者が自然に亡くなられるまでの過程を見守ることです。
もともと看取りとは、病人のそばにいて世話をする、死期まで見守る・看病するなど、患者を介護する行いそのものを表していました。
しかし、最近では、介護や看病などのお世話の有無に限らず、人生の最期(臨死期)を見守ることを指して「看取り」と考えることに変化しつつあります。
残された人生の充実さ、死に対する本人の意志の尊重などが重要視されるようになり、緩和ケア、終末期ケアやエンゼルケアとも密接な関係性を持っています。
ちょこっと豆知識
では実際に、緩和ケア、終末ケア、エンゼルケアとはどういうものでしょうか。知っている事で、看取りとの違いがより明確になるかも知れません。
緩和ケア
2002年 WHO(世界保健機関)によると
”緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。”
と定義されています。
つまり、病を抱える患者さんやそのご家族に対して、生じる問題やあらゆる苦しみを医療従事者が対応し、QOLの概念である、よい人生を実現するために支援することです。
終末期ケア
別名「ターミナルケア」といわれています。
ターミナルケアの目的は、余命わずかな人から、認知症や老衰の方々、死を目前にした方たちが、人生を自分らしく満足して最後を迎えるられるようにする事です。
延命治療よりも、病気や症状による痛みや不快感を和らげ、残された人生の充実さを優先したケアに重きが置かれています。
緩和ケアの一部とも言われていますが、
ターミナルケアに加えて、治療と並行して行われるものが緩和ケア
治療よりも残された生活を心穏やかに過ごしてもらうように努めるのがターミナルケア
と、少し違いがあります。
ターミナルケアは、延命を諦めることにすぎないため、患者本人や家族の方々の苦渋の決断が、迫られることも現にあることです。
エンゼルケア
エンゼルケアとは、人が亡くなった後に行う死後処置のことです。
内容としては、病院により少し違いがありますが、医療器具を外した後の手当、耳・口・鼻への脱脂綿詰め、治療でできた傷の手当、身体の清拭、着替え、死化粧などがあります。
患者の意志やご家族の希望、病院の方針などを配慮して処置が行われています。
看取り士とは?
余命告知を受けてから納棺前までの幸せなエンディングをプロデュースする専門職です。
一般社団法人日本看取り士会の柴田久美子会長が看取り士と名乗ったのが始まりといわれています。
住み慣れた家や希望する場所で最後を迎えたいなど、ご本人の要望に寄り添い、自然かつ幸せな最期を迎える環境を共創していきます。
医療行為はできず第三者の立場であるが、故に本人そして親族の方の不安や心配を受け止め、静かに温かく寄り添います。
最後を迎えるそれぞれを援助する温かい存在が、看取り士なのです。
そんな看取り士は、誰しもがなれるものではなく、日本看取り士会による認定証が必要です。
看取り学を受講し、認定証を手にすれば看取り士と名乗ることが可能になります。
最後を目前にした際に、自身の人生が良いものだったと満足して旅立てるよう、寄り添うことが看取り士の役割です。
ターミナルケアのチームの一員としての活躍も、期待されている存在でもあります。
仕事内容はどんなものがある?
看取り士の仕事内容は大きく分けて5つの仕事内容があります。
1.相談業務
家に帰りたいという悩みが大半を占めています。そのような要望や、本人・ご家族の方が抱える問題に寄り添い共創していきます。
2.死生観を家族に伝える寄り添い業務
沢山の方の命がけのメッセージを受け取り、本人の死生観をご家族の方と共有します。
人は生きていく中で魂にエネルギーを蓄積していきますが、旅立つ際には、計り知れないエネルギーを発します。
そのエネルギーを愛する人やご家族の方に受け渡せるようにも、寄り添い、共有することはとても重要です。
3.荒くなった呼吸に、看取り士が呼吸合わせを行い、穏やかな呼吸に収める
本人の体に触れながら呼吸を合わせていきます。
本人と家族との間で一体感と安らぎを生む事、そして幸せに看取るためのねらいがあります。
4.看取りの作法をご家族に伝えしていただくこと
大切な方が息を引き取ろうとしているときに慌てないためにも、ご家族の方に看取りまでの流れを説明する事は重要です。
傍で見届ける家族は何をするのが適切なのか、前もって把握していただく事でご家族の安心にもつながります。
気が動転してしまい慌てないためにも、ご家族の方の協力も必要です。
5.命のバトンリレーをつなげること
長き人生を積み重ねてきて手渡す命のバトンを、しっかりとご家族の方々に受け渡せるようにサポートしています。
命のバトンはしっかりと触れた人に受け継がれて、受け取ったものの生きる力となっていくといわれています。
そのためご遺体を見るだけではなく、触れる体験を一番大切にしており、命のバトンを子や孫へのつなげていくのです。
主にこれら5つの業務を通して、かけがえのない一生を本人とご家族の方と共創しているのです。
どうすれば看取り士になれる?
では、そんな看取り士になるには何が必要なのでしょうか。
看取り士は誰しもがなれるものではなく、きちんとした講座を受講し、認定証を受け取る必要があります。
日本看取り士会による看取り学、初級講座、中級講座、上級講座の3講座を受講すると、看取り士認定証が取得できます。
認定証を手にするとともに、看取り士と名乗ることができ、依頼先に現地派遣され、対応する事が可能になります。
最後に
看取りについてのあれこれを沢山述べてきましたが、必ずしも看取り士を利用した方がいいというわけではありません。
看取りがいいのか、延命治療を行なった方がいいのかの正解はなく、大切な事は、後悔しない選択をする事です。
誰にでも必ず訪れる「死」。
満足して旅立てる方法の一つとして、看取り士を利用する事があります。
本人やご家族の意思と看取り士の方針が上手くマッチすれば、かけがえのない一生を思い直し、幸せな旅立ちができるかも知れませんね。